
新型コロナウイルス対策で注目度急浮上のテレワーク
感染症対策として強力に推進されて脚光を浴びる
新型コロナウイルスの感染リスクが日々高まっていく日本において、国は幾つかの基本対策を打ち出しています。そのうち、2020年2月25日付で公表された「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」には次のような一文が載っています。
①患者・感染者との接触機会を減らす観点から、企業に 対して発熱等の風邪症状が見られる職員等への休暇 取得の勧奨、テレワークや時差出勤の推進等を強力に呼びかける。
「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」
2020年2月25日 新型コロナウイルス感染症対策本部決定
一時の注目を浴び、いつの間にか消えていくカタカナの働き方たち
例えば、勤務間インターバル制度を知っていますか? フレックス制なら有名だし一部では定着していますが「大企業の特権」的なイメージを持っているのは私だけでしょうか?

参考までに、わたしが働いてきた職場のうち、フレックス制が導入されていたのは某金融業の1社のみ。中小企業5社には「フ」という文字すら存在しませんでした。
ワーケーションは? パラレルワークは?
「オランダを見習え!!」と一時期メディアに取り上げられていたワークシェアリングは、今やほぼ死語になっています…。
目的はどれも同じ「少し余裕のある働き方」を目指している
テレワークも含めたこれらの働き方。捉えにくいカタカナ名称に戸惑いがちになりますが、着眼点やアプローチ方法は違えども最終的な目的は同じ、「少し余裕のある働き方」です。
残業が少しばかり減って、有給や休みがちょっと取りやすくなり、少数派の人々(障害者、持病持ち、介護者など)もテレワークを利用して働ける「少し余裕のある働き方」。
今まで「推進!推進!」とメディアで騒がれながらも、実現化されるわけないと諦め切っていた、働き方後進国の日本では夢物語な「少し余裕のある働き方」。
そんな「少し余裕のある働き方」へのアプローチの1つであるテレワークですが、今回のコロナ騒ぎでにわかに脚光を浴び、多くの企業が実施せざるを得ない状況になりました。
果たして、世界では当たり前になりつつあるこの働き方が日本でも定着することはあり得るのでしょうか。
しっかり抑えておきたい!テレワークとはどんな働き方か
要は「会社以外で仕事をする働き方」ということ
ニュースでもお馴染みの言葉となったテレワーク。簡単に説明するとこんな感じです。
- 雇用型テレワーク:企業に雇用された状態で、会社以外の場所で働くこと。
※ 非正規雇用も含まれるのかは微妙。- 在宅勤務:自宅で働く場合。
- モバイルワーク:モバイル端末を使い、外出先で働く(営業など)場合。
- サテライトオフィス勤務:用意された会社以外でのオフィスで行う場合。
- 非雇用型(自営型)テレワーク:フリーランス、業務委託のこと。

フリーランスであるわたくしagenasubiは、非雇用型テレワーカーの1人、ということになるんですね。
新型コロナパンデミック前後のテレワークの動向を考える

日本のテレワークの実現化を阻む被雇用者側と企業側との温度差
2019年5月31日に総務省が発表した「テレワークの最新動向と総務省の政策展開」を見てみましょう。
Check! 2019年「テレワークの最新動向と総務省の政策展開 テレワークの普及状況」総務省HP- 就職希望者の働き方へのニーズ(p4)
- 「転職活動で応募する企業を選ぶとき転職志望度が上がる制度は?(複数回答)」という質問に対し、49.5%もの就職希望者が「テレワーク」と答えている。
- テレワークの普及状況(p9)
- 日本の企業のテレワーク導入率は13.9%であり、アメリカの85%、イギリスの38.2%、カナダの23%などに比べるとかなり低い。
つまり、被雇用者(労働者)側からの期待やニーズは高いにもかかわらず、企業側が積極的に導入するまでに至っていない。というのが現状と考えられます。
企業が導入に踏み切れない理由は「テレワークに適した仕事がない」「情報漏洩の心配」「コミュニケーション不足への不安」などですが、工夫とお金があれば解決しそうです。
パンデミックの通過後、負けない日本の働き方の変化に着目せよ!
被雇用者からの「テレワークしたい!」というラブコールに応えられずに二の足を踏む企業ですが、ここで転機が訪れます。
未だかつて日本が経験したことのない未知のウイルスの大流行という未曽有の事態によって、 そんな企業側の足踏み状況が一気に崩壊し、多数の企業が否応なくテレワークを実施しなくてはならないという局面を迎えたのです。
「2020年3月26日、1都4県知事共同メッセージ発表」
東京都と隣接する神奈川、埼玉、千葉、山梨の4県の知事が不要不急の外出の自粛などを呼びかけ、政府もこれに同調する意向を示しました。

これで、テレワークを行う企業は一気に増えることになります。「テレワークに適した仕事がない」「設備が整っていない」などの理由は関係ありません。問答無用の実施です。
パンデミックの去った後、半分ほどの企業は元の働き方に戻るが、半分ほどの企業においてテレワークは定着する。
一度実施した企業や被雇用者は、テレワークがどんなものか、どのように行えばよいのか、実体験として知ることができます。
「通勤費が不要になる」「会議や報告における紙の資料が減り人件費が削減できる」「無駄話が減って生産性が向上する」などのメリットに気づく企業もあるでしょう。
「通勤時間の無駄がなくなる」 「仕事の途中で洗濯物が干せる」 「お昼を軽く食べた後、30分昼寝タイムを作れる」などの快適さを実感する人もいるでしょう。
予想できる様々なデメリットを考慮してもなおテレワークに可能性を見出す企業は、きっと想像より多いハズです。
そして、それらの企業は問題点を1つ1つ解決しながら、テレワークを働き方の多様性の1つとして定着させることで成長を遂げ、その企業をモデルケースとしてテレワークの導入が連鎖し、広がってゆきます。
その日の気分に合わせて働く場所を選べる社会。上司の顔色を気にせずに自分の仕事を終わらせることができる社会。さらには、1週間のリゾート旅行先のバリのホテルで仕事をこなせる社会。

ちょっと行き過ぎた妄想ですが…。
どうでしょう? 自分の理想の「少し余裕のある働き方」へ一歩近づいた社会が、パンデミックを乗り越えた向う側に見えたような気がしませんか?
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